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2025.07.31

読了時間:10分

AIで出店の羅針盤を手に入れる!商圏ポテンシャルの評価をシンプルにする「エリアスコアリング」活用法【前編】

倉田陽右

はじめに

こんにちは、マーケティングアナリストの倉田です。

出店の成否は、「経営戦略・マーケティング戦略」「商圏」「物件」「店舗運営・戦術」といった様々な要因が複雑に絡み合って決まります。中でも、客観的な数値で評価しやすい要因が 「商圏」 のポテンシャルです。今回はこちらをテーマに進めてまいります。

しかし、数値化や可視化が容易とはいえ、人口・世帯・事業所・駅・地価など多くの指標があり、これらを整理してポテンシャルの高低を判断するのは至難の業です。

そんな課題を解決するため、多くの指標をAI・機械学習を活用して一つの「スコア」に集約するのが、今回ご紹介する『エリアスコアリング』です

本ブログでは、実際に検証を行った結果をもとに、複数回にわたって以下の内容をお届けします。

  • スコアの活用例(本記事)
  • スコアの算出方法と、その設計思想
  • スコアの信頼性について
  • 未知の商圏でのスコアリング活用例

今回は、まず「スコアの活用例」として、スコアを使って何が見えてくるのかをご紹介します。

エリアスコアリングとは

AI・機械学習を駆使し、ポテンシャルを測りたい目的に対して、ターゲットエリアにて(町丁目・大字・メッシュ単位で)スコアリングを行うものです。

前々回、前回に私が書かせていただいた記事の図を引用しますと、以下の部分の話になります。

ereascoring03_img06.png売上予測はもう古い?──3層の適切評価で確度を高める出店戦略~前編の記事はこちら

売上予測はもう古い?──3層の適切評価で確度を高める出店戦略~後編の記事はこちら

店舗の有無をスコアリングする

今回は日本国内のカフェチェーンで一番店舗数の多い「某有名カフェの店舗の有無」を目的に、大阪府全域をターゲットエリアと仮定し、スコアリングを行いました。※スコアの算出方法は次回お伝えします。

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大字ごとにスコアを算出できます。

右の地図はスコアの値により

  • : スコア上位1%(ポテンシャルが極めて高い)
  • オレンジ: スコア上位5%
  • : スコア上位10%
  • : スコア上位20%
  • 水色: スコア上位50%
  • : スコア下位50%

として可視化しております。

スコアを使った4つのアクションプラン

店舗の有無スコアは売上を保証するものではありません。しかし、このスコアと実際の店舗の有無を掛け合わせることで、エリアを4つのパターンに分類し、それぞれに対して「次に何をすべきか」という具体的なアクションプランの仮説を立てることができます。

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①「スコア高」×「店舗アリ」:商圏の強みを再確認し、次の一手を考えるエリア

ereascoring03_img07.pngこのエリアは『店舗の有無』のスコアと実際の状況が一致しています。もし店舗の実績も良ければ、その成功要因の一部は商圏のポテンシャルである可能性が高いでしょう。そのため、ドミナント戦略や新業態のテストといった、さらなる深耕策を検討する価値があります。

②「スコア高」×「店舗ナシ」:商圏ポテンシャルが高い未開拓エリア

ereascoring03_img08.pngデータ上は「店舗があってもおかしくない」と示されているにも関わらず、まだ出店していないエリアです。なぜ出店してこなかったのか、物件がなかったのか、それとも見過ごしていたのか。改めて、優先的に物件探しや詳細な立地評価を進めるべき候補地と言えるでしょう。

③「スコア低」×「店舗アリ」:独自の成功要因を探るべきエリア

ereascoring03_img09.png「商圏ポテンシャルは高くないはずなのに、なぜこの店舗は成立しているのか?」という問いが生まれるエリアです。非常に優れた店長がいるのか、他にない特殊な物件なのか。その店舗独自の成功要因を徹底的に分析することで、他の店舗運営にも活かせる貴重な知見が得られる可能性があります。

④「スコア低」×「店舗ナシ」:長期視点で変化を待つエリア

ereascoring03_img10.png現状では、積極的にアプローチする優先度は低いかもしれません。しかし、駅の再開発や大型商業施設の建設計画など、商圏の特性を根底から変えるような大きな変化が起きた時、このエリアのスコアは一変する可能性があります。長期的な視点で情報を追い続け、チャンスを逃さないようにしましょう。

まとめ:スコアリングによる確度の高い「次の一手」

今回は、AIを活用した「エリアスコアリング」が、出店戦略においてどのように役立つかをご紹介しました。

スコアと実際の店舗状況を掛け合わせることで、エリアを4つのパターンに分類し、それぞれに対して具体的なアクションプランの仮説を立てられることをお分かりいただけたかと思います。

これにより、これまで担当者の皆様のノウハウに頼りがちだった意思決定に、スコアリングの視点を加えることで次の一手に向けたプラン整理ができ確度が上がります。

しかし、そもそもこの便利な「スコア」は、一体どのように算出されているのでしょうか?

次回は、その裏側にあるAIの仕組みと、私たちが単なる「予測」ではなく「スコアリング」にこだわる理由について、さらに詳しく解説していきます。どうぞご期待ください!


エリアスコアリングのサービス概要は下記URLをご参照ください。

<最新のAIを活用したエリアマーケティングソリューション「エリアスコアリング」>

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